江崎芳雄・専務理事のコーナー

G−02 政府勘定のデータの見方



(政府勘定の概要)

1.

以下の表のデータの出所は、内閣府経済社会研究所国民経済計算部の推計による国民経済計算(SNA)(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html の確報)の付表である。一般政府を3部門(中央政府、地方政府、社会保障基金)に分けた上で、すべての収入と支出の計数、収入と支出の差額(赤字額)、この差額(赤字)の資金手当ての内容を表示している。
<各表と出所の対比は末尾参照>

2.

SNAは国連の作成する作成マニュアルによっており、小さな勘定がいくつも連なっているので取りつきにくいと思われる。これを簡単に解説すると勘定表の構成は(以下は中央政府を例に説明している)、

@一次所得の収支(付加価値税による収入や利子の受払い等)をまず算出。
A次に二次所得の収支(所得税や社会保障基金、地方政府等の一般政府内の他の部門への移転等)を算出(表の中では二次所得ではなく可処分所得という名称になっている)。
Bこの可処分所得から最終消費支出を差し引いて貯蓄を算出。
C貯蓄と固定資本形成(公共投資)及び在庫品増加(在庫投資)といった「投資」への支出の差額及び資本移転の収支差額等を合計して純貸出(+)/純借入(−)を算出。

という4つの勘定からなっている。

3.

以上のうち@、A、BはSNAでは「所得支出勘定」と呼ばれる部分であり、Cは「資本調達勘定」の「実物取引」と呼ばれる部分である。

4.

これらの勘定は以下のように鳥瞰して考えれば理解が容易かと思われる。

@ まず収入から消費支出を差し引いて貯蓄を算出し(所得支出勘定)、次にこの貯蓄を原資に投資を行い(資本調達勘定)、その差が純貸出(+)/純借入(−)と呼ばれる計数になる。この項目は古いSNAや教科書では「貯蓄・投資バランス」と呼ばれたものである
A この貯蓄投資バランスの算出のプロセスはまず所得支出勘定の差額である貯蓄が資本調達勘定の受取の一部として計上され、次に資本調達勘定の差額として貯蓄投資バランスが算出されていることからわかるようにつまるところ総収入と総支出の差がこのバランスになっている(このため「貯蓄投資バランス」という用語ではなく「純貸出/純借入」という用語が使われている)。

5.

勘定は上記2の@からCで終わりではない。Cでえられたバランス尻(差額)を如何に資金的に手当したのか(政府の最近のバランス尻は赤字なので借入や債券発行で資金を調達する必要がある)、この内容が勘定の最後の部分に出てくる。この部分は資本調達勘定の「金融取引」といわれる。 概念上は金融取引の収支尻である「純貸出(+)/純借入(−)(資金過不足)」と実物取引の収支尻である「純貸出(+)/純借入(−)」は計数が一致すべきものであるが、推計に使っているデータが異なっているため通常は一致しない。なお各種分析で貯蓄・投資バランス(略称ISバランス)として使われているのは、多くの場合、実物勘定のバランス尻である。

6.

年報の前半部分には部門別(家計、企業、政府)の所得支出勘定、同じく資本調達勘定がそれぞれ示されている。しかし離れた別々(勘定別)の場所に掲載されており全体の姿が鳥瞰しづらい。これに対して上記付表6-1は両勘定が1つの表としてまとめて掲載されているので、政府の収入と支出がどのようになっているのか、その構造を理解するにはこちらのほうが便利である。また中央政府、社会保障基金、地方政府という政府の部門別の計数は付表6-1、6-2にしか出てこない(※)。

※年報前半部の所得支出勘定、資本調達勘定では一般政府合計の計数が暦年、年度の両単位で掲載されている。これに対し付表6-1、6-2の一般政府の部門別の計数は年度のみが掲載されている。

7.

2005基準からは付表6-2として付表6-1の項目を支出・収入に並べ替えた表が公表されている(従来の当コーナーでは付表6(旧基準)の項目を支出・収入に並べ替える加工を施したものを掲載していたが今回から削除した)。

8.

最近の政府収入、支出で金額の大きなものは年金や医療費などの社会保障関連のものである。医療、年金等の社会保障にかかる計数については、SNAにおいては社会保障基金という特別の部門を勘定の中に設け、ここにまとめて計上されている。このため政府の資金の動きを把握するには上記の収入、支出と並んで一般政府の中の3部門間の移転の計数を把握することが不可欠である。そこでこのデータセットでは移転に係る計数をG-15でまとめて掲載した。

9.

2005基準の計数は1994年までしか遡及されていない。そこで旧基準の計数(1980〜2008)をGG-**として掲載した。基準の違いにより推計方法の差があり(特に固定資本減耗の推計の考え方)両基準の計数間には差が生じているので注意されたい。



(SNAについての解説書)

SNAの考え方についてのより詳しい解説が必要な場合には内閣府社会経済研究所 国民経済計算部が公表している各種資料を参考にされたい。なかでも 「我が国の93SNAへの移行について」がわかりやすいと思われる。

(財務省作成のデータ)

企業会計に基づくバランスシートとフロー表を平成16年度より財務省が公表している。これについては財務省のホームページを参照(http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/siryou/zaiseidg/h20_kouhyou_2.htm)



<<掲載データの出所>>

 G-11〜G-15 付表6-1
 G21〜G24 付表6-2
 G-31 付表8
 G-41 付表9
 G-54 付表10