江崎芳雄・専務理事のコーナー

G−03 表を見るためのいくつかの項目についての解説



 以下の解説はG-11表の項目番号を引用している。

No.9 社会負担(受取)


(1) 現実社会負担:共済組合や国民健康保険、厚生年金などに対する医療保険、年金のための掛け金支払額(政府部門にとっては受取)。雇用者本人の払い込み分は「b雇用者の強制的社会負担」、雇い主の負担分は「a雇い主の強制的現実社会負担」となる。なお社会負担の明細(医療、年金別・会計別)は「G−51社会保障負担の明細表」に示されている。
(2) 帰属社会負担:家計や企業による無基金制度(No12-(2)参照)への負担金(政府部門にとっては受取)。

No.10−(2) 一般政府内の経常移転(受取)


中央政府と地方政府、中央政府と社会保障基金など一般政府を構成する3部門の間における移転で、受け取り側において投資の源泉にならないもの(なるものは資本移転に区分される)。具体的には中央政府から社会保障基金への補助金や中央政府から地方政府への地方交付税交付金等である。

No.12 現物社会移転以外の社会給付(支払)


(1) 現金による社会保障給付:老齢年金、年金基金等からの現金による年金給付。
(2) 無基金雇用者社会給付:退職金など。
(3) 社会扶助給付:一般政府から家計への移転のうち,社会保障制度を通じる以外のものである。中身は生活保護費,原爆医療費,遺族等年金,恩給などがあげられる。

No.17 最終消費支出


「(1)現実社会移転(個別消費支出)」と「(2)現実最終消費(集合消費支出)」の2つの項目よりなっている。

No.17−(1)現物社会移転(個別消費支出)


(ア)医療保険給付と介護保険給付にともなう政府の支出。
(イ)「a.現物社会給付」は社会保障基金が家計に対して払い戻しを行う「(a)払い戻しによる社会保障給付」と、関連するサービスを直接受給者に支給する「(b)その他の現物社会給付」に区分される
(ウ)「(a)払い戻しによる社会保障給付」とは高額医療・出産給付金が相当する
(エ)「(b)その他の現物社会給付」とは医療費と介護であり、前者は政府が7割、後者は政府が9割の負担をしているので、各々の額が政府の最終消費になる(現実消費支出という概念を採用する場合にはどちらも家計の消費に計上される。<本メモの末尾の「参考:消費について」参照>)
(オ)「個別的非市場財・サービスの移転」とはほとんどが教育関連で国公立の幼稚園、小学校、中学校、高校、大学の教員の人件費や関連施設の固定資本減耗や教科書購入費(児童の負担はなく教科書は無償で配布される)、児童保険等負担金(公立保育園分)等にともなう政府の支出である。 なお、個別的という名称がついているのは下記17-(2)の「集合消費」と対比する概念で、受益者が特定される(国公立学校に通っている者や教科書を無償で配布された者は特定することができる)ためである。

No.17−(2)現実最終消費(集合消費支出)


外交、防衛、警察等政府が社会全体に対して行うサービス、いわゆる公共財を供給するための費用が計上されている。サービスの受益者が特定できないため政府が生産し政府が「消費」するとみなして勘定が組まれている。

No.19 資本移転(受取)の(2)居住者からのもの

「うち資本税」とあるのは相続税等。残額は例えばSNAで金融機関(公的金融機関)に区分されている「財政投融資特別会計」から一般政府(中央政府)に区分されている「国債整理基金特別会計」への繰入金(法律に基づくもの)等が含まれる。


〔参考:消費について〕

SNAでは消費は2種類の概念がある。

@ 最終消費支出は 支出を行ったものが消費したとみなした計数である。このため対価を支出した部門に計上される
A 現実消費支出は 便益を享受したものが「消費」したとみなした計数である。このため費用を支弁していないが便益を享受したものに計上される。
B 例えば医療保険の場合、自己負担分が3割なので医療費が100とすると最終消費支出では30が家計に、70が政府の消費(最終消費)に計上される。これに対して現実消費支出ではすべて家計に計上される
C このように「最終」と「現実」は異なる意味で使われている。しかし付表6ではNo.17最終消費支出の内訳項目に(2)現実消費支出という項目が出てきており「最終」と「現実」が混在している。
D この理由は現実消費支出の内容は公共サービスであり実際には家計や企業が対価を払うことなく消費し便益を得ている。しかし公共サービスという性格上消費者を特定するのは困難である。そこで政府が消費したと擬制して計数を処理しているものの、実態は家計や企業が対価を直接支弁することなく現実に便益を得ているので「現実消費」という用語が使われているのではないかと思われる。
E なお政府の支出のなかで巨額を占めているのは年金の支払と医療費の支払い(自己負担分を除く)である。この2者の計数は年金は12(の(1))に、医療費は17-(1)-aにそれぞれ分かれて表象されているので表の使用時には留意が必要である。